病名告知は本人より家族に?

大病院以外では,終末期の治療の主体は,患者本人よりも家族にあるというショッキングな結果.患者自身による自己決定の保証という点を考えると,現状は終末期医療の理想からまだ遠い.

終末期の病名告知 患者本人46%、家族は96%
2006年05月04日10時21分

 全国の中小規模の一般病院で、余命が半年以下と思われる「終末期」の患者本人に病名を告知している割合は45.9%で、延命処置の希望確認はさらに低く15.2%だったことが、厚生労働省の研究班の調査で明らかになった。一方で、患者家族には病名告知で95.8%と高い割合で伝えており、終末期医療の現場で、患者本人の意向より家族の意見を重視する実態が浮かび上がった。

 調査は04年10??11月、全国にある中小規模の一般病院(50??300床)から1000病院を無作為抽出して質問票を郵送し、145病院から回答を得た(回答率14.5%)。終末期患者の多くが、ホスピスや緩和ケア病棟などではなく、中小規模の病院で死亡しているため、対象を絞った。

 全入院患者中、終末期患者の占める割合は9.1%。患者本人に病名を告知している割合は、単純平均すると45.9%だった。家族に対しての病名告知は全体の4分3強の病院が100%としており、平均95.8%。抗がん剤治療などで積極的な治療を目指すか、緩和ケアに徹するかなど治療方針の確認も、患者が47.2%に対し、家族が83.4%だった。

 余命告知は患者本人には平均26.6%だが、家族には90.8%。余命1カ月以内の「最終末期」に、心臓マッサージ、人工呼吸器の装着、昇圧剤投与などの延命処置に関する希望確認も、患者本人に15.2%で、家族が86.8%だった。

 主任研究者の松島英介・東京医科歯科大助教授は「患者本人が希望する場合は基本的には情報提供をするべきだが、チーム医療が充実している大病院と違い、中小は限られた人員で、本人に知らせても、その後のケアが十分にできないという面もあり、大きな課題だ」と話す。