無言館設立の背景

著者は私財を投じて無言館を建てた人物.画家の野見山暁治とのエピソードも記され,無言館創設に関わった人々の思いが伝わる.無言館の話を持ちかけても,絵画を手放さない遺族の話など,印象的な場面が多い.戦後今日に至るまで,戦死した画学生の絵画が公的に評価され位置づけられることがなかった.一般市民の支援が広がり無言館設立に至ったが,歴史的に見ても価値の高いはずの戦没画学生の絵画を一顧だにしない戦後日本への無念もにじむ.